銭湯の湯船につかって、正面の大きな富士山の絵を眺めていたら、隣のおじいさんが「この絵、去年描き直したんだよ」と教えてくれました。ペンキ絵は描き直すものだと、そのとき初めて知りました。
今日10月10日は、「1010(せんとう)」の語呂合わせで銭湯の日。東京都浴場組合などが呼びかけている記念日です。ふだん何気なく入っている銭湯の話を7つ。

1. 東京の銭湯は、8月から600円に
東京都の銭湯の入浴料(大人)は、2026年8月1日から550円から600円に上がりました。一方で、小学生200円、未就学児100円は据え置きです。
燃料費や設備の維持費が上がるなか、子どもの料金は上げずに守った。銭湯が「地域のお風呂」であり続けるための判断とも言えます。
2. 銭湯の料金は、都道府県が決めている
実は銭湯の入浴料は、お店が自由に決めているわけではありません。「物価統制令」という法律にもとづいて、都道府県ごとに上限額(統制額)が定められています。
戦後まもなくできた法律で、いまも対象になっているのは銭湯くらい。銭湯が、誰もが使う生活インフラとして扱われてきたことの名残です。だから同じ銭湯でも、県が変わると料金が変わります。
3. 富士山の絵は、1912年の一軒から始まった
銭湯といえば、壁いっぱいの富士山。このペンキ絵の始まりは1912年(大正元年)、東京・神田猿楽町にあった「キカイ湯」だとされています。
お客さんに楽しんでもらおうと、浴室の壁に画家の川越広四郎が絵を描いたところ評判になり、ほかの銭湯もまねをするようになりました。描かれたのが富士山だったのは、川越が静岡県の出身だったからという説もあります。
4. ペンキ絵は、何年かごとに描き直す
冒頭のおじいさんの話のとおり、ペンキ絵は湯気で傷むため、数年ごとに描き直されることが多いです。描き直しは、お店が休みの日に1日で仕上げてしまうことも。
今ではペンキ絵を描ける絵師はごくわずかです。同じ富士山でも、絵師や描いた年によって表情が違うので、銭湯めぐりをするなら壁の絵を見比べるのも楽しみのひとつです。

5. お寺のような建物「宮造り」
東京の古い銭湯には、お寺や神社のような立派な屋根の建物があります。これは「宮造り(みやづくり)」と呼ばれるスタイルで、関東大震災のあとに東京で広まったとされています。
寺社建築を手がけていた大工さんが銭湯を建てたことがきっかけとも言われます。「お風呂に入る」ことを、ちょっと特別な体験にするための建物だったのかもしれません。
6. 黄色い桶は、薬の広告だった
銭湯の洗い場でおなじみの、黄色いプラスチックの桶。底に「ケロリン」と書かれたあの桶は、1963年ごろから使われ始めた頭痛薬の広告です。
それまでの木の桶に比べて丈夫で衛生的なうえ、お客さんが毎日目にする場所に広告が出せる。銭湯と薬の会社、両方にとって得なアイデアでした。今では、銭湯の風景そのものになっています。
7. 木札の下足箱は「松竹錠」
銭湯の入り口の下足箱。木の札を抜いて鍵にする、あの仕組みは「松竹錠(しょうちくじょう)」と呼ばれます。
好きな番号の札を選べるのもひそかな楽しみで、誕生日や縁起のいい番号の札を毎回選ぶという常連さんもいます。空いていたら、今日は10番を選んでみてはどうでしょう。
まとめ:銭湯は、町のインフラであり文化
法律で決まる料金、1912年に始まった富士山、宮造りの建物、黄色い桶、木札の鍵。ひとつひとつに、町の人に長く通ってもらうための工夫が詰まっています。
銭湯の日の今日は、近くの銭湯へ。湯船につかったら、正面の壁の絵をゆっくり眺めてみてください。
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