行きつけの定食屋のレジ横に、ほこりをかぶった招き猫がいます。ある日、お会計のときに気づきました。その猫、左手を上げている。店主に聞くと「お金より、お客さんが来てくれたほうがいいからね」とのこと。20年通って、初めて知った話でした。
今日9月29日は、「くる(9)ふく(29)」の語呂合わせで招き猫の日。日本招猫倶楽部が1995年に制定しました。店先でおなじみの猫の話を7つ。

1. 右手はお金、左手はお客さん
いちばんよく知られているのがこれです。右手を上げた猫は金運を、左手を上げた猫は人(お客さん)を招くとされています。
ただしこれは地域や作り手によって逆に説明されることもあり、「絶対の決まり」ではありません。飲食店や商店で左手の猫が多いと言われるのは、まずお客さんが来なければ始まらない商売ならではの考え方かもしれません。
2. 両手を上げた猫は、賛否が分かれる
お金もお客さんも両方ほしい、という欲張りな両手上げの招き猫もあります。縁起物として人気がある一方で、「お手上げ」に見えるので嫌う人もいるのがおもしろいところ。
どちらが正しいというより、置く人の気持ち次第。欲張りを笑って許せるかどうかで選べばいいと思います。
3. 手が高いほど、遠くの福を招く
招き猫の手には、耳より低いものから頭の上まで高く上げたものまであります。一般に、手が高いほど遠くの福や客を招くとされています。
一方で「手が長すぎると、手が届かないほど遠くの福ばかり招く」と冗談めかして言う人も。身の丈に合った高さを選ぶのが、招き猫との上手な付き合い方かもしれません。
4. 色によって、ご利益が変わる
定番は白ですが、色にもそれぞれ意味があります。白は福、黒は魔除け、金は金運、赤は病除け。赤い色は、昔から疱瘡(天然痘)などの病を遠ざけると信じられてきた色です。
最近はピンクや青、緑など、恋愛運や学業運をうたったカラフルな招き猫も増えました。縁起物は時代とともに増えていくもので、招き猫もその例外ではありません。

5. 発祥の地は、ひとつではない
招き猫の由来には複数の説があります。有名なのが東京・世田谷の豪徳寺の話。彦根藩主の井伊直孝が、寺の門前で手招きする猫に誘われて立ち寄ったところ、直後に雷雨になり難を逃れた、という伝説です。
一方、東京・浅草の今戸神社には、今戸焼の猫の人形が始まりだとする話が伝わります。どちらも「うちが元祖」と言い切らないところに、江戸の人らしいおおらかさを感じます。
6. 豪徳寺の猫は、小判を持っていない
豪徳寺では招き猫を「招福猫児(まねきねこ)」と呼び、境内には奉納された猫がずらりと並んでいます。よく見ると、ここの猫は小判を持っていません。
猫が招くのは「縁」であって、それをどう生かすかは本人次第、という考え方だとされています。お金そのものではなく、きっかけを招く。商売繁盛の猫が、いちばん商売っ気がないというのが、なんとも粋です。
7. 海外の招き猫が「手を振っている」理由
中華街や海外のお店で、手を前後にゆらゆら動かす金色の招き猫を見たことがあるかもしれません。これは日本の招き猫が海外に渡り、現地の「おいで」の仕草に合わせて形が変わったものと言われています。
欧米では手のひらを自分に向けて招くのが一般的なので、日本式の手招きは「さようなら」に見えてしまう。同じ仕草でも、国が変われば意味が変わる。招き猫は、小さな異文化交流の窓口でもあります。
まとめ:猫が招くのは、きっかけ
右手か左手か、手の高さ、色。招き猫には選び方の楽しみがたくさんあります。でもいちばん大事なのは、豪徳寺の猫が教えてくれるとおり、招かれた縁をどう生かすかのほうなのかもしれません。
家に招き猫がある人は、今日はほこりをはらってあげてください。うちの定食屋の猫にも、今日は声をかけてみようと思います。
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