実家に帰ると、なぜか部屋が暑い。「エアコンつけないの」と聞くと、母は決まって「そんなに暑くないでしょう」と言います。温度計を見ると31℃。本人の体感と、温度計の数字が、はっきりずれている。あれを最初に見たときは、正直ぞっとしました。
9月15日は「老人の日」です。かつてはこの日が敬老の日でしたが、2003年から敬老の日は9月の第3月曜に移り、9月15日は老人の日、そこから1週間が老人週間になりました。今日は、離れて暮らす親と話しておきたいことを7つ。説教くさくならずに聞き出すのが、いちばん難しいところです。

1. 体調の話は、「病院どこだっけ」から入る
「体調どう?」と聞いても、たいてい「元気元気」で終わります。親は心配をかけたくないので、だいたい元気だと言う。これはもう仕様です。
だから、入口を変えます。「かかりつけの病院ってどこだっけ」「薬って何飲んでるんだっけ」。事実を聞く形にすると、驚くほどすらすら答えてくれます。お薬手帳の写真を1枚送ってもらえれば完璧です。いざというとき、搬送先の医師にとってこれ以上ない情報になります。
2. お金の「置き場所」だけ聞いておく
いちばん切り出しにくい話ですが、聞くのは金額ではありません。どこにあるかだけです。銀行はどこか、通帳と印鑑はどのあたりか、保険に入っているか。
「財産の話をするなんて縁起でもない」と言われたら、こう返してみてください。「お金の話じゃなくて、探す場所の話。いざというとき家中ひっくり返したくないから」。実際そのとおりで、家族が困るのはたいていあるかないか分からないものを探す時間です。
3. 家の中の危ないところを、一緒に歩く
高齢者の事故は、外より家の中で多く起きます。玄関の段差、浴室、階段、そして倒れてくる家具。
帰省したときに、5分だけ家の中を一緒に歩いてみてください。寝室のタンスが寝ている頭の側にないか、廊下に新聞や紙袋が積まれていないか、風呂場に手すりがあるか。ついでに、部屋に温湿度計をひとつ置いてくる。冒頭の「そんなに暑くない」問題は、数字を置くだけでかなり解決します。「28℃を超えたらエアコン」とルールにしてしまうのが、いちばん揉めません。
4. 連絡の取り方を、決めておく
災害が起きたとき、電話はつながりません。そのとき「まず171、次にメッセージ」と決めてあるかどうかで、翌日の消耗がまったく変わります。
災害用伝言ダイヤル171は、毎月1日と15日に体験利用ができます。今日はちょうど15日。電話のついでに「せっかくだから今日、171やってみようよ」と誘うのに、これ以上ない日です。ついでに、遠くに住む親戚を「中継役」に決めておくと万全です。

5. 詐欺の話は、「うちの合言葉」で笑いながら
「オレオレ詐欺には気をつけてね」と言うと、親はたいてい「私は大丈夫」と答えます。この「私は大丈夫」が、いちばん危ない返事です。
説得しようとせず、仕組みにしてしまいましょう。家族だけの合言葉を決める。うちは「実家の犬の名前」にしました。多少ばかばかしいくらいのほうが、記憶に残ります。あわせて、留守番電話を常時オンにしておく、知らない番号には出ない、お金の話が出たら必ず一度切ってかけ直す。この3つだけで、防げる被害はかなりあります。
6. 車の話は、いちばん慎重に
運転免許の返納は、いちばんもめる話題です。当然で、車を手放すというのは行動範囲を手放すことだからです。「危ないからやめて」だけでは、まず通りません。
先に代わりを用意するほうが現実的です。買い物はどうするのか、通院はどうするのか。自治体のコミュニティバス、タクシー補助、宅配。「やめて」ではなく「こうすれば足りるかな」から始める。時間はかかりますが、こちらのほうが結局早い気がします。
7. 「どうしたいか」を、一度だけ聞いておく
最後は、いちばん重い話です。もしものとき、どんな医療を望むか。葬儀はどうしたいか。誰に連絡してほしいか。
これは一度で終わらせなくていい話です。むしろ、思い出したときにぽつぽつ話すほうが健全だと思います。テレビでその手のニュースが流れたときに「お父さんはどう思う?」と聞いてみる。それくらいの温度で十分です。書き留めておく場所を決めておけば、あとは少しずつ埋まっていきます。
まとめ:今日は、電話をかける口実がある日
7つ全部を今日聞き出そうとすると、まず尋問になります。おすすめは1つだけ。「かかりつけの病院どこだっけ」あたりから始めてください。
そして電話の最後に、「今日15日だから171やってみない?」と付け足す。用事のある電話は、かけるほうも気が楽です。老人の日というのは、たぶんそのためにある日なのだと思います。
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