【夏の災害から命を守る7選】ゲリラ豪雨・地震・猛暑…今日からできる「間に合う備え」

洗濯物を取り込みながら「今日は降らないな」と思った十数分後に、目の前の道路が川になっていた。そんな経験、ここ数年で一度はないでしょうか。日本の夏は、ゲリラ豪雨も地震も猛暑も、ぜんぶ同じ季節にやってきます。やっかいなのは、どれも「起きてから調べていたのでは間に合わない」こと。この記事では「へえ」で終わらせないために、数字と手順をできるだけ具体的に書きました。全部やらなくて大丈夫です。ひとつだけ選んで、今週やってみてください。

1. ゲリラ豪雨は「空が暗くなってから」では遅い

気象庁は2026年5月下旬から、線状降水帯の発生を2〜3時間前を目標に知らせる「直前予測」の運用を始めました。これまでの半日前の呼びかけと合わせて、危険が二段階で届くようになったわけです。

とはいえ、通知が届いても気づかなければ意味がありません。今日やってほしいのは、防災アプリを開いて自分の住んでいる市区町村と、職場や学校のある市区町村の両方を登録し、通知をオンにすること。所要時間は3分ほどです。

そしてもうひとつ、体で覚えておきたいサインがあります。真っ黒い雲が近づいてくる、急に冷たい風が吹く、遠くでゴロゴロ鳴りはじめる。これは積乱雲が発達している合図で、そこから10分ほどで景色が変わることがあります。「まだ大丈夫」と思ったときが、屋内に入るタイミングです。

2. キキクルは「紫になる前」に動くための道具

雨が降り出したら開いてほしいのが、気象庁の「キキクル(危険度分布)」。自分のいる場所の危険度が、地図の色でひと目でわかります。

色は黄(注意)→赤(警戒)→紫(危険)→黒(災害切迫)の順に上がっていきます。紫は「避難が必要なレベル」、黒に至っては「すでに災害が起きていてもおかしくない」段階です。つまり、紫を見てから支度を始めるのでは遅い。赤になった時点で、靴を出す、貴重品をまとめる、家族に連絡する。そこまで済ませておけば、紫になったときにドアを開けるだけで済みます。

スマホのホーム画面にキキクルのショートカットを置いておくと、慌てて検索せずに開けます。

3. 冠水した道に車で入らない。水深60cmでセダンは止まる

JAFが行った冠水路の走行テストが、なかなか衝撃的です。水深30cmならセダンもSUVも時速10km・30kmで走り抜けられました。ところが水深60cmになると、セダンは31m地点でエンジンが停止。フロントガラスの下端まで水をかぶった状態でした。SUVは時速10kmならなんとか走破できたものの、時速30kmでは走り切れていません。

怖いのは、実際の冠水路では水深も、水の下で何が起きているかも見えないこと。外れたマンホール、側溝との境目、めくれたアスファルト。すべて水の中に隠れます。だからJAFの結論も「安易に進入せず、迂回を考えたほうがよい」でした。

そして万一、車が水に浸かってしまったら。車内外の水圧差でドアはほとんど開きません。脱出は窓から、が基本です。脱出用ハンマーは、トランクではなく運転席から手の届く場所に。いざという時にトランクは開けに行けません。

4. 猛暑で亡くなる人の95%は、家の中にいる

東京都監察医務院の集計によると、令和6年の夏に東京23区で熱中症で亡くなった方は306人。そのうち95.1%が屋内での発生でした。さらに屋内で亡くなった291人を見ると、エアコンが未設置だった人が63.6%、設置してあったのに使っていなかった人が22.0%。合わせて85.2%にのぼります。

「外に出なければ大丈夫」は、いちばん危ない思い込みです。そして「設置してあるのに使っていない」という数字の向こうには、たぶん「もったいないから」「そんなに暑くない」と言う、あの人の顔があります。

できることは案外シンプルで、部屋に温湿度計をひとつ置くこと。年齢を重ねると暑さを感じにくくなるので、体感ではなく数字で判断できるようにしておくのが効きます。室温28℃を超えていたらエアコンをつける、と決めてしまう。離れて暮らす家族には、天気の話のついでに「エアコンつけてる?」と一言。それだけで防げることがあります。

5. 熱中症アラートを「その日の行動ルール」に変える

環境省と気象庁の熱中症警戒アラートは、暑さ指数(WBGT)が33以上になると予測される場合に発表されます。さらに厳しい熱中症特別警戒アラートは、都道府県内のすべての地点で35以上が予測されることが条件。令和8年度は4月22日から運用が始まっています。

アラートは「知って終わり」にすると意味がありません。おすすめは、あらかじめルールを決めておくこと。たとえば「アラートが出た日は、外の用事を朝と夕方に寄せる」「草むしりと洗車はやらない」「エアコンは切らない」。決めておけば、その日に迷わずに済みます。

もし具合の悪そうな人がいたら、手順はこうです。涼しい場所へ移して衣服をゆるめ、首、わきの下、太もものつけ根を集中的に冷やす。太い血管が体表近くを通っているので、ここを冷やすのがいちばん効率的です。意識がしっかりしていれば、経口補水液や食塩水、塩分の入ったスポーツドリンクを。意識がない、吐き気や嘔吐がある場合は、飲ませてはいけません。すぐに救急車を呼んでください。

6. 地震のケガの3〜5割は家具。まずは寝室から

東京都によると、近年の地震による負傷者の30〜50%は、家具類の転倒・落下・移動が原因です。建物が無事でも、部屋の中で大けがをすることがあるということ。

もっとも確実なのは、壁にL字金具でネジ止めすること。金具は下向きに取り付けるといちばん強度が出ます。賃貸で穴を開けられないなら、突っ張り棒にストッパー式や粘着マットを組み合わせると効果が上がります。キャスター付きの家具はロックをかけたうえで、着脱式ベルトで壁につないでおきましょう。

ぜんぶは無理でも、寝室だけは今週やってほしいところです。寝ている頭の上に、倒れてくるものを置かない。これだけでも違います。あわせて、窓ガラスの飛散防止フィルムと、枕元にスリッパと懐中電灯を。暗闇で割れたガラスの上を素足で歩くことほど、避けたい状況はありません。

7. 夏の地震は「停電+断水+猛暑」のセットでやってくる

真夏に停電すれば、エアコンも冷蔵庫も止まります。そこに断水が重なるのが、夏の災害のいちばんしんどいところです。

見落とされがちなのがトイレ。東京都は1日5回×3日分×家族の人数を携帯トイレの最低限の目安としています。4人家族なら60個、できれば1週間分。そして集合住宅では、排水管が壊れていないと確認できるまで自宅のトイレを流さないこと。損傷に気づかずに流すと、下の階で汚水があふれることがあります。

飲料水は1人1日3リットル×3日分。加えて、モバイルバッテリー、乾電池、カセットコンロ、保冷剤、電池式の扇風機。冷凍庫のペットボトルは、凍らせておけば保冷剤にも飲み水にもなります。冷蔵庫は、停電しても扉を開けなければしばらく冷気が保ちますので、開け閉めはまとめて一度に。

備えは、今週ひとつでいい

最後にもうひとつだけ。災害用伝言ダイヤル「171」は、実は毎月1日と15日、それに8月30日9時から9月5日17時までの防災週間に体験利用ができます。使い方は「171」にかけて、録音なら1、再生なら2を押し、自宅などの電話番号を市外局番から入力するだけ。録音できるのは30秒です。

ちょうど今週末から防災週間が始まります。家族で30秒ずつ吹き込んでみるだけで、「あれ、どうやるんだっけ」が本番でなくなります。

防災は、一度にすべてそろえようとすると必ず腰が重くなります。今週は寝室の家具の固定、来週は水と携帯トイレの買い足し、その次はハザードマップを開いてみる。それくらいのペースで十分です。小さな準備の積み重ねが、この夏、あなたと大切な人を守ってくれます。

災害のときこそ、地図が味方になる

「情報共有マップくん」は、合同会社ファービヨンドが運営する、みんなで場所の情報を持ち寄る地図アプリのシリーズです。いざという時に頼りになるものを中心にご紹介します。

  • 災害伝言板と防災施設情報の共有ガイドMAP……避難所などの防災施設を地図で探せて、災害用伝言板も使えるアプリ。(iOSAndroid
  • トイレ情報共有マップくん……断水時や避難生活でいちばん切実になるのがトイレ。多目的トイレやオムツ替え台の有無まで探せます。(Web版iOSAndroid
  • 病院マップ……熱中症や急なケガのとき、近くの医療機関を確認できます。(Web版
  • 銭湯・温泉情報共有マップくん……断水や停電で自宅のお風呂が使えないときの、入浴先さがしに。(Web版iOSAndroid

どれも、ふだんから使い慣れておくことがいちばんの防災になります。いざという時に「どこにあったっけ」と探さずに済むよう、この夏のうちにスマホに入れておいてください。

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