お祭りの何がいちばん楽しいかと聞かれたら、私は迷わず屋台と答えます。花火より、神輿より、あの通りに並んだ電球と匂いのほうが好きです。
ところが、あれだけ通っているのに中身は何も知らない。りんご飴はなぜ赤いのか、ポイはなぜあんなに破れるのか。今日は、縁日グルメと屋台遊びの豆知識を7つ。

先に告白しておくと、私は型抜きに一度も成功したことがありません。小学生のころから数えて、たぶん20回はやっています。毎回、最後の細い部分でパキッといく。あの音を聞くたびに「今回は惜しかった」と思うのですが、20回連続で惜しいのは、もう実力です。
1. 屋台は「祭りのついで」ではなく、祭りの一部だった
神社の縁日に露天商が並ぶ形は、江戸時代にはすでに定着していました。参拝に人が集まる日を狙って商売が立ち、その賑わい自体が人を呼ぶ。屋台があるから人が来て、人が来るから祭りが続いたという関係です。
だから、屋台を「おまけ」と考えるのは実は逆で、あれは祭りを経済的に成立させてきた仕組みでもあります。境内の空気が屋台の照明でできているのは、偶然ではありません。
2. りんご飴が赤いのは、りんごの色ではない
りんご飴のあの赤は、りんごの皮の色ではなく、飴に着色料を入れた色です。中の果肉は普通に白い。透明な飴でも味は同じなのですが、赤くないと売れない。あの赤は完全に見た目の演出です。
近年は姫りんごを使った小ぶりなものや、透明な飴で果肉の色を見せるタイプも増えました。それでも縁日の定番は、やっぱり赤。味ではなく色を買っている食べ物という点で、りんご飴はけっこう珍しい存在だと思います。
3. わたあめは、機械の発明から始まった
綿あめは料理として生まれたのではなく、機械が先にできたお菓子です。19世紀末のアメリカで綿菓子製造機が発明され、1904年のセントルイス万国博覧会で売り出されて大人気になりました。
ザラメを高速回転する釜で溶かし、細い穴から遠心力で飛ばす。空気中で一瞬に固まった糸を巻き取る。あの巨大な塊は、ほぼ空気です。実際に使われているザラメは、思っているよりずっと少ない。子どもに「これ、ほとんど空気だよ」と言うと、たいてい嫌な顔をされます。
4. 金魚すくいのポイには、号数がある
あの紙の道具は「ポイ」といって、紙の厚さによって号数が決まっています。数字が大きいほど紙が薄く、破れやすい。一般的には4号から7号あたりが使われ、子ども向けには厚い号、大会では薄い号が使われます。
コツは、ポイ全体を一気に水に入れて、水面と平行を保つこと。斜めに入れると水の抵抗が一点にかかって破れます。そして狙うのは、動きの遅い金魚と、水面近くを泳いでいる個体。底にいる金魚を追うと、それだけでポイが濡れて寿命が縮みます。

5. 型抜きと射的は、難易度が設計されている
型抜きの板は、細い部分がわざと残るように図柄が作られています。太い線だけの図柄なら誰でも抜けてしまうので、必ずどこかに「勝負どころ」が仕込まれている。私が20回負けているのは、そういう理由だと思うことにしています。
射的も同じで、コルク弾は軽く、景品は倒れにくい重心で置かれています。狙うなら景品の上のほうではなく台のふちに近い下側。倒すのではなく、押し出して落とすイメージです。とはいえ、あれは当てて遊ぶ場所であって、獲るための場所ではない。そう考えると、負けてもだいぶ気が楽になります。
6. 屋台に粉ものが多いのには理由がある
たこ焼き、お好み焼き、焼きそば、ベビーカステラ、クレープ。屋台の主力はほとんどが小麦粉です。
理由は単純で、原価が安く、日持ちがして、大量に早く作れるから。屋台は限られた時間に集中して売る商売なので、回転の速さがそのまま売上になります。そして粉ものは匂いが強い。ソースの焦げる匂いは、看板よりよく働くというわけです。あの匂いに勝てる人はそういません。
7. いまの屋台は、けっこう変わってきている
ここ数年で目立つのが、キャッシュレス対応です。QRコード決済のシールを貼った屋台が確実に増えました。一方で、現金しか使えない店もまだ多い。結論としては、小銭と千円札を用意していくのがいちばん強いです。
値段も上がりました。粉ものも、いか焼きも、かき氷も。原材料費と燃料費を考えれば当然なのですが、「昔は500円で三つ買えた」という話は、たいてい記憶のほうが古い。あれは物価ではなく、こちらが大人になった分の値段だと思うことにしています。
まとめ:知っていても、たぶんまた型抜きをやる
ポイの号数を知っても金魚は増えませんし、型抜きの構造を知っても板は割れます。それでもやる。屋台とは、そういう場所です。
今年もお祭りに行く予定があるなら、小銭とウェットティッシュ、そしてトイレの場所だけは先に確認しておいてください。たこ焼きを持ったまま行列に並ぶのは、なかなかの苦行です。
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