子どものころ、花火の光と音がずれて届くのが不思議でしかたありませんでした。大人に聞いたら「遠いからだよ」と言われ、なるほどと思ったふりをして、まったく納得していなかったのを覚えています。
あのずれには、ちゃんと数字で説明がつきます。今日は、夜空で開くまでのあいだに何が起きているのかを7つに分けて。読んだあとの花火は、たぶん少しだけ違って見えます。

ちなみに私は数年前、いい場所を取ろうとして開始3時間前に河川敷に着き、あまりに暇でスマホの充電を使い切りました。肝心の打ち上げ中は、暗い中でただ座っているだけ。場所取りより先に、バッテリーを取るべきでした。
1. 花火の玉の中身は「星」と「割薬」
打ち上げ花火の玉を割ると、中には小さな粒がびっしり詰まっています。これが「星(ほし)」。燃えながら飛んで、あの光の点になる部分です。
星は玉の内側にきれいに並べられていて、中心には割薬(わりやく)という火薬が入っています。上空で割薬が破裂し、星を四方八方へ均等に押し出す。まん丸に開くかどうかは、この星の並べ方と割薬の量で決まります。日本の花火が球状に開くのは、職人が手で一粒ずつ並べているからです。海外の花火が平面的に見えることがあるのは、構造そのものが違うためです。
2. 色は、理科の授業でやった「炎色反応」
花火の色は、金属が燃えるときに出す固有の光を使っています。理科の実験でやった炎色反応そのものです。
- 赤……ストロンチウム
- 緑……バリウム
- 黄……ナトリウム
- 青緑〜青……銅
- 橙……カルシウム
このなかで、花火師がいちばん苦労するのが青だと言われます。銅の青は温度が高すぎると白っぽく飛んでしまい、低すぎると鈍くなる。「きれいな青を出せる花火師は腕がいい」と言われるのは、そういう事情です。今度の大会で深い青が出たら、拍手するポイントだと思ってください。
3. 尺玉は直径30cm、開くと320m
大会でよく聞く「尺玉」は10号玉のこと。玉そのものの直径は約30cm、重さは8kgほどあります。これが打ち上げられて上空およそ330mまで上がり、開いたときの直径は約320m。
320mというのは、東京タワーがすっぽり入る大きさです。それが夜空にひとつ咲いて、数秒で消える。数百メートルの造形物を、数秒だけ空に建てていると考えると、なかなかとんでもない芸当だと思います。

4. 音が遅れるのは、光と音の速さの差
冒頭の疑問の答えがこれです。光はほぼ一瞬で届きますが、音が空気を伝わる速さはおよそ秒速340m。つまり1km先で開いた花火の音は、約3秒遅れて届きます。
逆に言えば、光ってから音が届くまでの秒数を3倍すれば、だいたいの距離(km)が分かる。「1、2、3」と数えてドンと来たら約1km。雷の距離を測るのと同じ方法です。子どもと一緒に見るときの小ネタとして、かなり使えます。
5. 「たまや」「かぎや」は、花火屋さんの屋号
花火が上がったときの掛け声「たまやー」「かぎやー」。あれは擬音でも感嘆詞でもなく、江戸時代の花火屋の屋号です。鍵屋と、そこから暖簾分けした玉屋。両国の川開きで技を競い、観客がひいきの側の名を呼んだのが始まりとされています。
ちなみに玉屋は火事を出して江戸を追われ、一代限りで姿を消したと伝えられています。にもかかわらず、いま声援としてよく残っているのは玉屋のほう。消えた店の名前が200年後も夜空に向かって叫ばれているというのは、なかなかすごい話です。
6. 花火大会は、夏だけのものではない
花火は夏の季語ですが、大会は秋にもたくさんあります。むしろ、空気が乾いて澄む秋のほうが、花火はくっきり見えるとも言われます。夏の湿った空気は光をにじませるからです。
日本三大花火大会と呼ばれるのは、秋田の大曲、新潟の長岡、そして茨城の土浦。このうち土浦は例年秋に開かれる競技大会で、花火師が技を競う場として知られています。夏に行きそびれた人は、秋の大会を調べてみてください。人出も夏よりは落ち着いていて、虫も少ない。個人的には秋のほうが好きです。
7. 見に行く日の、身も蓋もない話
最後は現実的な話を。花火大会で消耗する原因は、たいてい花火以外のところにあります。トイレの行列、飲み物の売り切れ、そして帰りの駅の大混雑。
対策も地味です。会場に着く前にトイレの場所を確認しておく。飲み物は会場に入る手前で買っておく(中に入るほど高く、そして売り切れます)。帰りは、最寄り駅ではなく一つ隣の駅まで歩く。この3つを知っているだけで、同じ大会がまるで違う体験になります。
そして電波。人が集中すると通信が混み合って、待ち合わせのメッセージが届きません。「はぐれたら◯◯の前」と先に決めておくのが、いちばん確実な通信手段です。
まとめ:今年はまだ、間に合います
玉の中に星が並んでいること、青がいちばん難しいこと、音が3秒で1km。知っていても花火はきれいですし、知っているともう少しきれいです。
秋の大会はこれからが本番。行く予定がある人は、バッテリーとトイレの場所だけ、先に押さえておいてください。私のように河川敷で3時間、無になる必要はありません。
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花火大会や祭りの日にいちばん困るのは、たいていトイレと飲み物です。地図で先に押さえておくと、当日がずいぶん楽になります。
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