序章:日本を震撼させた「かい人21面相」
1980年代前半、日本の大手食品メーカーを狙った前代未聞の脅迫事件が発生しました。
その名も「グリコ・森永事件」
事実は小説よりなんとやら。
脅迫文の送り主は自らを 「かい人21面相」 と名乗り、新聞社や警察に挑戦状を送り続けました。
事件は単なる企業への嫌がらせに留まらず、日本社会全体を巻き込み、食品業界・流通業界・警察の信頼を大きく揺るがすことになります。
●事件の経緯
江崎グリコ社長の誘拐(1984年3月)
事件の始まりは、菓子メーカー・江崎グリコの社長が自宅から誘拐される衝撃的な出来事でした。
幸い数日後に社長は脱出・保護されましたが、犯人グループはここから本格的に「食品を毒物で汚染した」と脅迫を続けます。
●食品への毒混入宣言
犯人は「青酸入りチョコレートを店頭に置いた」と宣言。
実際に一部の店頭商品から青酸入り菓子が発見され、社会は大混乱に陥りました。
スーパーから菓子が消え、企業の株価も急落。子どもを持つ家庭を中心に、不安が全国に広がったのです。
●標的の拡大
その後、森永製菓をはじめとする複数の食品会社にも脅迫が及びました。
犯人は警察を挑発するかのように、手紙や声明文を次々送りつけます。
「警察は無能」「次はどの会社を狙うかわからない」——その言葉に、警察も社会も翻弄され続けました。
●事件の結末と未解決の謎
1985年8月、突如として「かい人21面相」から終息宣言が出され、事件は唐突に幕を閉じました。
犯人グループは逮捕されず、時効を迎えた現在も真相は闇の中です。
謎として残ったのは:
犯人はなぜ突然「撤退」を宣言したのか?
本当に食品に毒を混入していたのか?
背後に暴力団や企業間抗争はあったのか?
これらは今も未解明のままです。
●社会に残した教訓
グリコ・森永事件は、企業と消費者の「信頼」を一気に揺るがしました。
スーパーの棚から菓子が消えた光景は、戦後日本の食品安全における大きな転換点だったとも言われます。
さらにこの事件は、後の 「闇バイト型犯罪」や「SNSでの脅迫事件」 とも共通点があります。
匿名で人心を揺さぶり、社会を混乱させる——その原型がすでにこの時代に存在していたのです。
●まとめ
グリコ・森永事件は、単なる未解決事件に留まらず、 「社会心理を利用した大規模な情報テロ」 とも言えるものでした。
事件から40年近く経った今でも「未解決事件特集」で必ず取り上げられるのは、
日本社会に刻まれた衝撃と教訓が、いまなお消えていないからでしょう。
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